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このページは、ゲーム「エンドブレイカー!」に関するメモ書きです。「らっかみ!」「CelestialCall」についてはカテゴリーから。
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「ずっとここで待ってる」っていうのがカイザックのキャッチコピーでして、彼はあの屋敷でずっと、誰かを待っています。
いつでもあえる、あいにいけるキャラクターでありたいですね。

【カイザックの過去は知らないままでいたいよ、だとか、そもそも興味ないよ、という方は続きを読まない方がきっと楽しいです】
文章がつたないのは素人のメモなので許してください。

+ + + + + + + + + +

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カイザックが18歳になったころ、彼にとってそれはそれは辛いことが起きた。
カイザックは神様も、天国も地獄も信じていなかった。
だから、悲しむ他に何もできなかったし、しなかった。

春になり、暖かくなった頃。
よく知った人々と別れ、よく知った土地を離れて、出来るだけ遠くへ行くことにした。
辛いことを忘れるためではなくて、ただ、知らないところへ行きたかった。
自分がここにいても、もう何の意味もないのだ。
反対はされたが、旅行だとか何とか言って、とにかく旅に出た。

一人でする旅は、人見知りをするカイザックにとって大変な苦労だった。
それでも暑くなる頃には、それにも慣れてきた。
カイザックは夏の間、たくさんの人とすれ違い、その誰とも関わらないまま旅を続けた。
一人というより孤独だった。
誰も自分のことを知らないなら、このあたりで死んだって、べつにかまわない。

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カイザックは春に旅をはじめた。夏の間ずんずんと進み、秋になって足を止め、冬には根っこを生やしてしまった。
これは、足を止めた秋の話。
---

涼しくなり始めた頃、通り過ぎるつもりだったある街で、カイザックは初老の男性の瞳に最期を視た。
誰もいない森で、ひとりぼっちで、おそらく病で、寂しげに亡くなるところだった。

カイザックは寂しげな姿のその彼も、独りなのだと思った。
不思議と、彼には簡単に話しかけることができた。
彼はカイザックの瞳を覗くように、寂しいか、と言った。
カイザックは素直に頷いた。

お互いの過去のことなど何も知らないまま、親子以上に歳の離れた二人は友達になった。
彼が死んでしまうまで、この街にいよう。カイザックはそう考えた。

彼はカイザックの予想に反して、物知りで友好的で、ユーモアのある人物だった。
というのも、ひとりぼっちでいるやつは、つまらなくて、ばかで、気が弱くて、ぐずでのろまで…とにかくそんなやつだとカイザックは思っていたからだ。
(ちなみにこれらは当時のカイザック自身にすっかり返ってくる言葉だ。*1)

彼は素敵な詩をたくさん知っていたし、聞いたこともないような言語や、難しい謎、息の詰まる怖い話から、息ができないほど笑える話も知っていた。
悩んでいることを話せば、目の覚めるような言葉をくれた。何か聞けば、思いもよらない方向から答えが飛んできた。

さて、彼と過ごした日数はわずかだったが、最後の日はやってきた。
カイザックははじめて彼の家へ足を向けた。
知らない土地で、ただひとり友達になった彼を看取るために。

彼の家があるという、静かで誰もいない、薄暗い森の奥へと進むうち、彼は本当に寂しかったんだ、とカイザックは思った。
けもの道の落ち葉を踏むたびに、寂しさがお腹の底の方にどんどん積み重なっていった。

ここでカイザックは、ふと立ち止まった。
彼の気持ちを考えているうちに、自分の考えが間違っていたことに気がついたのだ。
ただそこにいても意味がないように、ただ旅をしても意味はないのだと。
でもどうしたら?

うんうんと考え事をしながら木々の間を抜けると、目を見張るような景色が目の前に現れた。
いまだかつて見たこともない、どんな形容詞でも正しく表現できないような、とにかく、要するに、美しい湖と丘、それから森だった。

そこに彼の屋敷はあった。
豪華、とは言えないけれど、実用的で素敵で、2階だての。
誰もいない森の中の、美しい湖の見渡せる丘に、ひとりぼっちで立っているその屋敷は、友達の姿によく似ていた。

まだひよっこのカイザック(友達はカイザックをこう呼んでいた)が美しい景色について感想を述べている間、友達は楽しげに笑っていた。
少ない語彙で感想を言い尽くしたさいごに、素敵なところだね、とカイザックが言うと、
お前にやる、と彼は屋敷の鍵束をカイザックに渡した。
それはずっしりと重いわりに、綺麗な音をたてた。

医者は呼ばなかった。
物知りの彼が、これは治らないのだ、と言ってカイザックを止めてしまったからだ。
カイザックも彼の瞳からそれを識っていた。

彼はかすれた声で、カイザックの瞳を見通すようにつぶやいた。
私はなんてしあわせだったろう。お前と、もう会えないと思うと寂しい。
カイザックはできるだけ明るく答えた。
また会えるまで、ずっとここで待ってるよ。
彼は苦笑して、カイザックの目元を撫でた。カイザックは泣いていた。

気が付くとカイザックはひとりぼっちで、真っ赤に目を腫らして、眠っていたようだった。
屋敷のどこを探しても、生きている彼も、死んでいる彼も見つけることはできなかった。
彼はまだどこかで生きているのだと、根拠もなくカイザックは思った。

いつか戻る友達のために、森に遊歩道を作った。
沼に橋を渡し、散らかった庭を整えた。
屋敷の隅々まで掃除をした。
ここで彼を待とう。カイザックは暖炉に槇を焼べた。冬になっていた。

たまに旅人が迷子になってやってくると、カイザックはお茶を出してもてなした。
カイザックはそれが楽しかった。
時間はたくさんあったから、ただ待つのをやめて、勉強をした。
学校へ通うようにもなった。

また春がきて、冬になった。
彼がなかなか帰らないから、カイザックは誰に向けるでもなく看板を書いた。
「湖畔の屋敷で待っています」

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そうしてカイザックは誰かを待っています。
湖畔の屋敷にひとりで。


- - - - -

*1 補足 「つまらなくて、ばかで、気が弱くて、ぐずでのろまで……当時のカイザック自身にすっかり返ってくる言葉だ。
カイザックによる自己評価。実際はそれなりにしっかりしています。
だのに、カイザックは自分を「出来の悪い人間である」と決めつけていました。

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紹介
カイザック
男 12/26 成人 Cayzac

ひょん(?)なことから屋敷の管理を任され、今日もそこで誰かを待つ、元家出人。外見の冷たい雰囲気を、声と表情がやわらかく暖める。// 温厚で寂しがり屋でマメ。気が弱く頼りないけれど、言いたいことは言う気質。// 彼が歩くと、涼しい音が聞こえる。湖畔の屋敷を訪ねれば、いつでも会える。

ウィルマ ミュラー
男 2/15 未成年 Wilma Müller

マスターをすっかり見失ったガーディアンの元野生児、現体育会系アルバイター。家族はなく、現在は湖畔の屋敷に居候中。// その長身から怖がられることが多く、朗らかな表情と口調を心がけている。人なつこく、人に触れられるのが好き。// カイザックを「ご主人さん」と呼ぶ。

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渡 祐一
男 12/26 未成年 わたり ゆういち

天文部と合唱部に所属するごく普通の高校生。ちょっと違うのは、色が白いこと。食い意地が張っている、デジタルネイティブゆとり。

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ざっく (背後)
カイザックのひとつ年下

趣味の絵描き。ドイツ語が読めます。

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